INTERVIEW

職人図鑑 #22 秋山俊介(34歳)

子供たちの成長が仕事の張り合いになっています

Akiyama Syunsuke(age34)

Akiyama Syunsuke(age34)

安田塗装勤務 1984年4月21日、東京都生まれ。高校中退後、家業の印刷製版業に就く。26歳で安田塗装に入社、塗装職人に転職。職歴7年。子供は10歳の長男と8歳の長女

Chapter 1

家業の将来に見切りをつけて、塗装職人になりました

 塗装職人になったのは7年前、26歳のときです。それまでは家業を手伝っていたので、スタートは遅いんです。実家は文京区で秋山製版という印刷製版を生業にしています。

 高校はバスケットのスポーツ推薦で入学したんですが、コーチと折り合いが悪く、2年で中退しました。そのとき、親から就職して働くことを高校をやめる条件にされて……製版も自分が仕事した結果として、本というかたちに見えてきます。ですから、それなりに、やり甲斐も感じていたんですけれど。

 だけど、仕事を始めたときから、親からは「この仕事は先は長くないかもしれない」と言われていました。親は従来のアナログ製版だけでなく、最新のレーザー製版も採り入れていて、時代に流れに沿っていたんです。

 しかし、どんどん出版不況は深刻になり、製版代も抑えられていって、製版業には明るい将来があるとは思えない状況が、はっきりとしてきました。

 そんななか、22歳で結婚して、24歳で長男、26歳で長女が産まれて……将来のために別の仕事を探したほうがいい、何か手に職をつけたほうがいいと、親から言われるようになったんです。家業を継ぎたいという気持ちもありましたが、二子目が産まれたばかりで、子供たちの将来のことも考えて……家族を養い続けていこうと、次の仕事を探していくうちに、たどりついたのが、安田塗装の求人でした。

Chapter 1 家業の将来に見切りをつけて、塗装職人になりました

Chapter 2

子供の頃から職人に憧れていたんです

Chapter 2 子供の頃から職人に憧れていたんです

 もともと、職人さんへの憧れがあったんです。子供の頃、将来の夢は大工でしたしね。そこで、建築関係の職人になりたいと考えました。最初は鳶職もいいと思ったんですが、年齢的な限界がある。インターネットなどでいろいろ調べてみて、結局、塗装職人が自分に向いてるかもしれないと思ったんです。

 応募のときは、すごく緊張しました。履歴書は郵送するように言われましたが、髪を切って、慣れないスーツ姿で持参したんです。それまではピアスを結構な数、つけていたんですが、全部、外しました。戸建て住宅の仕事はお客様と日々、接しますので、うちの会社はピアスが禁止されているんです。茶髪も原則、認められていません。自分も入社以来、ピアスは一切つけていないんです。

 塗装職人として働き始めたのは、2011年3月8日。東日本大震災の3日前だったこともあって、その日のことは鮮明に覚えています。それまで自分は家で働いていたのに、家の外で働くようになって3日目での大地震。なので、妻もすごく不安だったと思います。一人きりで生後3か月と2歳の子供を抱えていたので、自分も心配でたまらなかった。

 仕事もまったくの未経験で何もわからなかったので、不安を感じていましたからね。しかし……職人として働く、生きていくと決めた以上、その道を突き進むしかない。家族で生活をしていくためには、何としてでも職人としての技術を習得したい、はやく一人前の職人になりたい、という気持ちが強かった。それで、震災後の不安や心配でいっぱいだった日々を前向きに生き抜くことができました。

 安田塗装に入社したとき、たまたま26歳の自分が一番、年下だったんです。ですから、年下の後輩がいなくて、少し気がラクでした。ただ、自分の後から入社した後輩も塗装職人の経験があるから、職歴は長かったりしたんですけれどね(笑)。入社したときの先輩は30代が1人で、あとは40歳以上のベテランで凄技の職人ばかり……仕事ぶりを見ていて、幼い頃に職人さんに憧れた気持ちがよみがえってきました。そして、きちんとした職人になりたいという思いを強くしたんです。

「きちんと養生すればきれいに仕上がる」——最初に教え込まれたのは、このことです。先輩職人さんたちの仕事を見ていると、自分が養生や下地がしっかりできていないところは仕上げに手間がかかってしまう。ですから、養生にマスキング、さらにケレンなどの下地処理をしっかりすることを、心がけていました。

Chapter 3

入社して2年後、一本立ちすることができました

 わりとすぐ、ローラーや刷毛を持たせてもらえたんです。そして、2年目には仕上げも任せてくれるようになりました。もちろん、何もかもスムーズにいったわけでななくて、ときには落ち込むこともあったんです。でも、家に帰って、幼い子供たちを見ると、気持ちが奮い立ってくる。いまこそ人生の勝負どころなんだ、という。うちの会社は親方制度はなく、独り立ちした職人一人ひとりが現場を任せられているんです。必死に頑張りましたので、入社2年後には一本立ちすることができました。

 いまは東池袋の会社に7時に集合、現場に向って、8時から仕事を始めています。帰りは現場によりますが、帰宅ははやくて夜6時、遅いときは夜8時くらいになります。朝がはやいんですが、家から会社までは近いので、助かっています。

 うちの社長は仕事の失敗については怒らないんですが、遅刻など時間を守らなかったり、挨拶をしないということにはすごくきびしいですからね。7年間で1回だけ、遅刻をしたことはありますけれど。言い訳なんですけれど、目覚まし時計が鳴らなくて……ちょっと、油断してしまったんです。

Chapter 3 入社して2年後、一本立ちすることができました

Chapter 4

将来の独立を具体的に考えているところです

 入社面接のとき、社長からこう言われたんです。「職人として仕事をしていくのなら、独立を考えたほうがいい」と。当時はどういう仕事なのか何もわからない状況だったので、ピンとこなかった。いま考えると、会社に頼って受け身で仕事をするのではなくて、独立独歩の姿勢の大切さ、職人としての心構え伝えたかったのかもしれません。

 うちの安田啓一社長は、塗装を通じての社会貢献に熱心なんです。社長は塗装ボランティア国際団体「塗魂インターナショナル」の会長。「塗魂インターナショナル」の母胎「塗魂ペインターズ」の設立メンバーでもあり、自分が入社した当時は会長でした。それで、自分も塗装ボランティアに参加していますが、いろいろな全国の塗装職人と知り合えるので、すごく刺激を受ける。それで、独立を真剣に考えるようになっていったんです。

 職歴7年ですから、職人として覚えることは、まだまだあります。また、会社経営のこともちゃんと勉強しなければならない。

 ただ、将来のビジョンは固まりつつあります。

 自分たちは秋山製版の7階建てビル、文京区の実家で両親と同居しているんです。いまも父はこのビルで製版業を続けてますが、将来、引退、廃業する日がきたら……ビルを改装して事務所にして、独立できたらと思っているんです。自分は日々、親が働く姿を見てきたので、子供も同じように見てもらいたいという気持ちもありますからね。

 そういえば、長男の幼稚園の卒園のとき。卒園生たちが記念にホールの壁を塗ることになって、手伝ってほしいと頼まれたんです。それで、会社に材料と道具を無償で提供してもらって、園児たちに塗り方を教えてあげたんですが、みんな楽しそうでした。そういうことがあったからか、長男は自宅のちょっとしたリフォームでうきうきとペンキ塗りをしています。まるで親バカですが、頼もしい気持ちになっているんです(笑)。たいへんな仕事ですから、本人の気持ち次第ですけれどね。

Chapter 4 将来の独立を具体的に考えているところです Chapter 4 将来の独立を具体的に考えているところです
Chapter 4 将来の独立を具体的に考えているところです

掲載日:2018/11/14

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