Ikeda Futoshi (age47)
1973年5月28日、宮崎県三股町生まれ。池田シーリング代表。中学卒業後、サッシ職人などを経て、19歳でシーリングの仕事を始め、27歳で独立。大阪竹和会・東光商会の協力企業として、竹中工務店施工の高層ビル、マンション、商業施設などでの仕事が多い
INTERVIEW
1973年5月28日、宮崎県三股町生まれ。池田シーリング代表。中学卒業後、サッシ職人などを経て、19歳でシーリングの仕事を始め、27歳で独立。大阪竹和会・東光商会の協力企業として、竹中工務店施工の高層ビル、マンション、商業施設などでの仕事が多い
Chapter 1
最初はサッシ職人だったんです。宮崎の中学を卒業後、兄貴に紹介されて、おもしろそうな仕事だと思って……。兵庫県の会社で2年ほど働いたんですが、いまひとつ、やり甲斐を感じられなかった。
それで、いろいろ職人系の仕事をしていたんですが、19歳のときに、先輩の紹介でこの仕事に就きました。それから27年、シーリング職人として続けられていますから、自分に向いていたんだと思います。結果として、サッシ周りのシーリングもありますので、サッシ職人の経験はこの仕事に生きています。
もともと、細かい作業が好きなんです。また、カタチのないものをカタチにしていくことも好きだった。この仕事は、天気や温度、湿度や周囲の環境にあわせて、シーリング材、工法も微妙に変えていかなければならないんです。
それまでの職人仕事には、そういう繊細なところがなくて、この仕事に出会ったとき、初めて、仕事として、やり続けたいと思いました。
Chapter 2
「mt art project」に参加したきっかけは??所属している東光商会からの紹介で、私のマスキングテープ技術でアート製作に挑戦してみないかと言われたことです。シーリング施工のマスキングテープでの養生は、直線ばかりではないので、テープを切らずに、細かな折り返しが必要になります。さすがに45°以上の鋭角での折り返しむずかしいんですが、曲面に沿ってテーピングすることもあります。
塗装ではテープを切ることも多いそうなんですが、シーリングの場合、いちいち切っていたら、すごく手間がかかる施工がたくさんあるんです。それに、テープを剥がすときにも、一気に作業ができますからね。シーリングには、そういう独特のテープの貼り方があるので、私に白羽の矢が立てられたみたいです。
最初にマスキングテープ、mtを使ったアート作品に挑戦したのは、2017年の東京・蔵前「mt lab」のオープニング。
「養生展」のための動画を撮って、オープニングイベントではお客さんの前で自分の技を披露しました。アートディレクター、居山浩二さんの設計図をもとに作品をつくりあげましたが、mtとふだん使っている業務用マスキングテープは素材や強度、粘着度が違うので、戸惑うところもあったんです。それだけに、ちょっと苦労したんですが、逆に、達成感もすごく感じました。
mtを使ったアート作品の展覧会、「mt art project at 3331 ARTS CHIYODA in TOKYO」のためにも作品を製作していたんです。当初、3月末に開催予定だったんですが、コロナ禍は治まらず、4月に延期、さらに5月に再延期されて、結局、中止になってしまいました。作品をつくった充足感は感じられましたが、みなさんにお見せすることができず、忸怩たる思いが残りました。仕方ないことですが、現在、この展覧会の作品はHPで公開されています。でも、やっぱり、実物を見てほしかったですね。
Chapter 3
ここ数年、現場は東京の高層ビルやマンション、商業施設などの大きな現場が多いんです。仕事としてはおもしろいんですが、私の地元は兵庫県西宮市なんですよ。ですから、平日は東京で暮らして、月2回くらい、週末に地元に帰るという生活を送っています。東京での仕事は腕を買われてのことだと思いますから、嬉しいんですけれど、いっぽう家族と離れて暮らすことにはさみしさを感じています。
いまの現場は、東京・愛宕山の虎ノ門ヒルズ レジデンシャルタワー。54階建て地下4階、高さ215.25m、総戸数約550戸の超高層マンションです。すごく大きな現場ですので、いろいろな施工があって、新しい工法や資材を使うこともありますので、毎日、刺激を受けています。昨年4月から池田シーリングの仲間4人と現場に入っているんですが、緊急事態宣言が発令されてからは、土曜の作業はストップ。ゴールデンウィークは全休でしたので、年内、いや、それ以上までかかるかもしれません。
子供は4人います。23歳の長男と高校1年の次男、中学2年の長女、それに、1歳9か月の三男です。三男は生まれたばかりですし、子供たちとの時間が取れないのはつらいところですね。
実は、アート作品をつくるようになるまで、mtの存在を知らなかったんです。でも、奥さんはmtを愛用していたようですし、長女もいろいろと集めているみたいです。ですから、「mt art project」にかかわることを話したら、我が家の女性陣は喜んでいました(笑)。
長男は17歳からシーリング職人として地元で働いています。自分の背中を見て同じ職業に就いた、のならいいんですが、正直、よくわかりません。ただ、最初の頃はやる気がないように見えていたんですが、最近、わからないことがあると、電話がかかってきます。仕事に責任を持たされるようになって、やる気が出てきたんだと思います。池田シーリングを大きくすることが自分の夢ですので、一人前になったら、うちに入ってくれればいいんですけれど……何か怖くて、本人に聞いたことはありません(笑)。ただ、いずれにせよ、長男は自分の道をしっかりと歩んでいるようですので、親として、ちょっと安心しているところです。
掲載日:2020/6/17
家族と暮らせないさみしさはありますが、大きなプロジェクトにかかわる喜びを感じています