Tozawa Ryouta (age51)
1970年10月13日 宮崎県生まれ。大手企業に勤める父親の仕事の関係で、中学,高校から22歳までを東京都町田市で過ごす。30歳まで東京で靴の小売業に就職。宮崎へ戻りアルミサッシの工場から防水の現場へ。防水職人歴15年。趣味は、温泉めぐりとラーメン屋を食べ歩くこと。所属/総合防水工事業・アイワ工業株式会社(宮崎県高岡町)
INTERVIEW
1970年10月13日 宮崎県生まれ。大手企業に勤める父親の仕事の関係で、中学,高校から22歳までを東京都町田市で過ごす。30歳まで東京で靴の小売業に就職。宮崎へ戻りアルミサッシの工場から防水の現場へ。防水職人歴15年。趣味は、温泉めぐりとラーメン屋を食べ歩くこと。所属/総合防水工事業・アイワ工業株式会社(宮崎県高岡町)
Chapter 1
生まれたのは宮崎です。が、中学校の時に大手企業に勤める父親の転勤で、家族そろって東京へ引っ越すことになりました。
どこの町へ引っ越そうか、家族で相談しましたが、宮崎しか知らない私にはわかりません。そこで、当時私はサッカーをやっていたので、「よし! サッカーの強い町田という町へ行こう!」ということに家族会議でなったのです。
東京都の町田市はサッカーに力を入れていて、FC町田ゼルビア(前FC町田)のほか、いろいろなクラブチームやスクールがあります。中学高校と学校はサッカー部に入りました。練習は厳しかったですね。
宮崎に戻ってきたのは、バブルの崩壊が影響しています。景気が悪くなってくると、店長会議で当時の靴店の2代目社長が突然、「50歳以上の笑顔は売り場にいらない」と、理不尽(りふじん)なことを言いだしました。
バブル全盛期に入社した私はちょうど26歳になっていましたが、「50歳になったら捨てられるのか!」と呆れ(あきれ)て、30歳になったら「よし、少年時代を過ごした宮崎に帰ろう」と思い立ったわけです。両親もすでに宮崎に戻っています。やっぱり親の顔は近くで見たいですからね。まだ独身で、身軽だったのもあります。
Chapter 2
宮崎に戻って、いきなり防水の職人になったわけではありません。まず免許を取るところから開始です。東京は電車やバスや地下鉄が便利なので、免許を持たなくても生活がしやすい。宮崎では車なしの生活は考えられませんよね。
それから職業安定所で仕事探しをしました。入ったのが住宅建材のアルミサッシの加工工場です。前職は販売ですからまるでちがいます。なかなか慣れなかったですね。そうして2年くらい務めているときに――よく行く居酒屋の常連のお客さんが「きみ、アルミサッシに詳しいんだったら、うちに来ないかい」と声をかけてくれたのがきっかけです。
さっそく翌日に、渡された番号へ電話をしました。「社長、昨日はお酒の席のことでしたが本当ですか」と聞くと、「ああ本当だよ」と二つ返事です。それまで、防水工事の経験はありません。しかし、社長の人柄を知っていたので転職を決めました。
実際の現場に立ったのは、それから1か月後。当然初めての現場ということになります。初日の現場は居酒屋のごみ置き場の防水工事です。置いてあるごみの袋を全部どかして、ブラシでゴシゴシゴシと床をこすっているとき、「こんな仕事、おれ続くのかな」と不安になったのを覚えています。
Chapter 3
仕事は先輩から教えてもらって覚えていくんですが、とにかく最初は怒られ続けでした。なにしろ、知っているのはサービス業である小売りの仕事です。仕事の段取りが全然ちがう。小売りはお客さんの話を聞くのが仕事。いっぽう現場は“聞くよりも見て覚えろ”ですよね。よく「なんで見て覚えないんだ!」と、先輩から怒られました。
でも、不思議と、辞めたいと思ったことはないんです。やっていて飽きない。日々、ちがう場所のちがう現場に行くのが楽しい。じつはラーメンの食べ歩きが趣味なんですね。つらさの中に楽しみありで、ネットで調べて現場近くの評判のお店に行きます。
日々勉強ですが、ようやく仕事を覚えてきたかなと、自分で思えるようになったのは2年後くらいからです。
下地材に、ウレタン樹脂だとかアスファルトとか、いろんな種類の防水材を混ぜて屋上を防水する。屋上に水が浸入してしまうと、建物全体に回ってしまうので重要な仕事だと思います。髪の毛一本の穴でも浸水しますし、台風など気圧の変化にも反応が変わります。もちろん美観も大切です。
また、私たちの現場は屋上で、危険な高所ばかりです。後ろ向きに1歩2歩と後ずさると、油断したその片足の半歩で落下してしまう。日々、緊張感をもって仕事をしてます。
家に帰ると恋人と気楽に過ごしていますよ。当たって砕けろ!で、ぶっちゃけ合コンで知り合いました。いつまで飲んでるの、なんて注意してもらって、ほっとして暮らしてます。
掲載日:2022年1月14日
半歩油断すれば足場から落ちる。緊張感を切らすことができない仕事です。