INTERVIEW
1978年2月長野県生まれ。“家”が好きだ。建築家を志しながら、大手家電工場でアルバイトをしていた青春時代。人生を模索する中、好きな“家”の仕事がしたくて一念発起。求人誌で塗装のアルバイトに応募した。真剣勝負で現場に打ち込み、わずか１年で独立、「有限会社協伸」を起業する。経営面でもメキメキと頭角を現し、営業車を33台保有する、成田ナンバーワンの塗装会社へと成長させた。陽あたりの良い広々としたガラス張りのオフィスには、若い社員たちの活気があふれている。尊敬する人は妻。最長15年保証。
有限会社協伸 https://www.tosou-kyoushin.com
Chapter 1
青春時代は、建築家を志していました。人が暮らす“家”が好きなんです。将来は小さな設計事務所に就職して、家族の息づかいが聞こえるような家を設計したい──そう思って勉強していました。
しかし、世の中はバブル崩壊の時代。理想の会社はどこも採用を控えてしまい、行く当てがありません。
どうしたらよいのだろう……。悩みを抱えながら、大手家電の工場でバイトを始めました。流れ作業でテレビを検品をする日々です。給料は良かったです。でも、毎日が単調な作業の繰り返しで、「自分の人生はこれで良いのだろうか……」と、悶々（もんもん）としながら過ごしていました。
そんなとき、ぱらぱらとめくっていた求人誌から目に飛び込んできたのが、塗装のアルバイト募集です。
経験もありませんでした。紹介や知り合いがいたわけでもありません。「でも家に関わる仕事だ。やってみよう」、これが人生の転機となりました。20歳の時でした。
Chapter 2
個人の塗装職人の下で働く職人見習いのアルバイトです。これが、やってみたら面白い。友人を誘ったら、彼らはいま皆が独立していますが、一様に「これは、おもしろい仕事だね」と言う。そうなんです、塗装の仕事はおもしろいのです！
おもしろいのだから、真剣に仕事に打ちこむことになります。それまでの人生の悩みが、一瞬にして晴れ、生きている実感が生まれて気持ちが明るくなりました。
仕事に熱中したかいがあって、1年で独立しました。塗装業界でも異例の早い独立だと思います。しかし、すでに現場を任される職人になっていた私は、自信満々。さまざまなタイミングで、その時期の独立となったわけです。
そのころの自分の腕前を振り返るとは、いやあ……（苦笑）。いまの時点から見ると下手です。当時は自信満々ですが、ふり返るとはずかしい。やっぱり深いんですよね、塗装の世界は。
俺は腕を上げたぞ！ と自信を持っても、数年経つと「あの時は、まだまだだったなあ」と、自分自身が気付いてしまう。こんなに怖くて、深くて、おもしろい仕事は、ほかに知りません。
Chapter 3
「協伸（きょうしん）」という会社名を業界の皆さんに知ってもらえるようになったのは、ここ数年のことです。ここまで無我夢中でやってきましたが、いまは5年、10年と事業計画を立てて会社経営をやっています。
車体に会社名をプリントした社用車は33台所有しています。その車で、職人たちが毎日、うちの現場へ出かけてゆくわけです。
協伸の特徴は、自社職人の会社ではありませんが、すべての職人が“塗装が好きな職人”だということですね。うちの仕事は細かいんです。だから、塗装が好きじゃないとできません。そういう職人だけが集まっています。 「あそこの仕事は細かくて嫌だ」という職人さんも結構いるんですよ。やっつけ作業でもいいから、とにかく現場を早くまわしたいという職人さんは、うちの仕事には合いません。
「腕の立つよい職人がいるので、たぶん合いますよ」と資材問屋さんが紹介してくれた職人さんが多いですね。そうした人達は、今度は逆に「協伸の仕事をやった」と言えば、どこへいっても信用される。そういう職人×会社の関係を築きました。
うちはお客さんがお客さんを紹介してくれて、大きくなった会社です。成田の町のあちこちを社名を入れた車が走っています。現場が看板ですね。
趣味はスケボーです。高校時代からやっていたのですが、最近は、小学校と3歳の長男次男と一緒にやっています。真ん中の長女は5歳。学校の行事へは絶対行きます。PTAの方々にもたくさんのお客さんがいますから、恥ずかしい仕事はできません。
朝ウォーキングで30分くらい町を歩くと、15軒くらい、うちが請け負ったお宅があるんです。毎日歩きながら家を見ています。すると、お客さんが、おはよう！と、声をかけてくれたりする。自分も胸を張って挨拶を返す──そういう会社を続けていきます。
掲載日：2022年4月8日
“家”が好きなんです。だから、そこに暮らす人と向き合う仕事がしたい。