Shimizu Yoshiyuki (age49)
1972年10月10日、東京都生まれ。埼玉県で育ち、18歳で塗装業界に入る。祖父の代から続く清水塗装工業を継いで、現在は同社の代表取締役を務めている。液体金属など新しいものの研究も怠らず、2017年の全国建築塗装技能競技大会では、最優秀賞の内閣総理大臣賞を受賞。2人の娘さんの父で、趣味は海釣り。
INTERVIEW
1972年10月10日、東京都生まれ。埼玉県で育ち、18歳で塗装業界に入る。祖父の代から続く清水塗装工業を継いで、現在は同社の代表取締役を務めている。液体金属など新しいものの研究も怠らず、2017年の全国建築塗装技能競技大会では、最優秀賞の内閣総理大臣賞を受賞。2人の娘さんの父で、趣味は海釣り。
Chapter 1
私は清水塗装工業の3代目なんですよ。小学生ぐらいから父の現場に出向いて手伝ったりしてました。ただ、それは遊びみたいなものでした。米軍基地の中で仕事をすることも多くて、海外の子供たちと遊んだりしたこともありましたね。
そんな経験もしてましたが、塗装の道に進むつもりは全くなかったですね。バイクのロードレースが好きで、レーサーになりたかったんですよ。塗装に対する興味は全然なかったと思います。
ただ、バイクのレースはすごくお金がかかるし、自分の実力としてもプロになるのは難しかったんです。それで改めて自分の道を考えて、実家を継ぐことにしました。
父と現場で一緒に働いたことはほとんどなかったですね。清水塗装工業の先輩のかたに仕事を教えていただく形でした。といっても、当時は職人で言葉で丁寧に仕事を教えてくれる人はいなかったですね。私がついたのも本当に厳しいかたでしたから、「見て覚えろ。見て盗め」という感じでした。
下積みの時期は長かったです。そのころは養生とペーパーしかやってなかったですし、職人さんの人数も多かったのでまかない的な仕事もやってました。
「辞めようか」と思うこともありましたけど、「お前は清水塗装の社長のせがれだろ」と、父と比べられることがすごく嫌だったので、腕だけでも親父を超えたいという思いをモチベーションにしていました。
Chapter 2
うちは変わった仕事が多いんですよ。設計屋さんと直接お仕事することもあって、某有名建築士さんの物件で、今までにない新しい塗料などの開発に関わらせていただいていますが、詳しくはお話しできません。でも、もうもの凄いことになっています(笑)。
名古屋のアイチ金属さんの依頼で、ポルシェ356を「VeroMetal」という液体金属で塗装したこともあります。
材料が新しくなっても、基本を忠実にやればできないことはないと思います。もしできないとしたら、基本が疎かになっているということです。
道具や材料が自分の仕事をカバーしてくれると思ってる人もいますけど、それは絶対にないです。仕事をコントロールするのは人間なので。
テープの選定も自分に合ったものじゃなくて、用途に合ったものを使わないといけないのに、そうしないから失敗する。カモ井さんの「正宗」「ミント」をよく使わせていただくんですよ。ミントに関して「粘着力が弱いから剥がれる」と言う人もいますけど、それも貼り方の問題だと思います。
液体金属で塗装したポルシェ。写真提供/清水義行氏
Chapter 3
趣味ですか? 趣味というか、当社のスタッフとアートワークの一環で椅子を作ったこともありますよ。塗装の概念だとやり過ぎだとブレーキがかかってしまうことも、アートワークという形にすることで、その殻が破れるんですよね。
椅子の脚は、金属の無垢材です。座面には左官材を使ってます。左官材の骨材を粗いものにしてエッジを立てることで隙間を作って、そこに違う色の材料を入れたり、いろんな技法を使って色を塗ってます。
技法は海外や日本にあるものを自分で研究してます。材料の成分を調べるのも好きで、調べてるうちに海外のものに行き着くこともあります。イタリアのオルトレマテリアもそうですね。扱ってる会社が全国でも少ない左官材なんですよ。
仕事と全く関係ない趣味だと、釣りもやってます。海釣りで、ルアーでも餌でもなんでも、どこにでも行きますよ(笑)。先々週は茨城のほうでタチウオを釣りました。デカすぎてリールがまけなくて、一瞬で糸が切れました。長いし太いし、60リッターのクーラーにも全然入らないんですよ。
今後の目標は、楽しくドキドキしながら仕事ができればいいのかなと思います。手がけたいものというか、「こういうものが欲しい」と思う人がいたら、その人が望むものを、その人の想像を少しでも超えるものを具現化したいですね。
掲載日:2022年4月8日
新しい材料を使うときでも、基本に忠実であればできないことはないと思っています。