INTERVIEW
1958年3月23日 鹿児島県大隅半島生まれ。職人歴40年。税理士をめざして名古屋の専門学校へ通っていたが、父に呼び戻されて地元で団体職員として就職。その時に、「デスクワークはむいていない」と気がつき大工、左官、塗装をはじめさまざまな職人修行を経て独立。鹿児島のラジオキー局MBCでは、面白くて役に立つと評判の『親方ひげちゃんのお住まい教室』を7年間にわたってオンエアー中。地元鹿児島では知らない人のいない薩摩男児の人気親方である。
有限会社 西谷工業 55-1152.com
Chapter 1
若い頃は税理士を目指して名古屋の専門学校へ通っていましたが、体調を崩した父親から「もどって来てくれ」と請われて、生まれ育った鹿児島県は大隅半島へ帰ることにしました。そうしていわゆるサラリーマン生活を始めることになったのです。
しかしそのことで逆に、「自分には机上の仕事（デスクワーク）は向いていない」と気づいてしまうのですね。やっぱり体を動かして働きたい。そこで、家の外観にかかわるエクステリアの会社で働き始めるわけです。
その会社では、相当鍛えられました。そして、鍛えられればられるほど、“手に職を付ける”ことの面白さに気づいてしまった。そこでわたしは、「自分の家を自分一人で建てるぞ！」という目標を立てて、大工さんや左官屋さんや塗装屋さんなど……、さまざまな職種の親方に頼み込んで、短期間ずつの修業を開始するわけです。
「お願いします！ 3か月間だけ修業をさせてください」と、職種を変えて次々修業をするわけですから、親方たちもさぞや驚いたことでしょう。
Chapter 2
初めて任された現場は、新築の外構工事＝ブロック積みでした。200メーターくらいはありましたね。嫁さんを手伝いに引っ張って行ったのですが、現場を見た瞬間は、正直ビビりましたよね。だって3か月しか修業をしていないんですから。しかも手伝いは、経験のない女房だけ。しかし何事も、「成せば成る！」が信条のわたしです。一生懸命にやって検査も一発でＯＫが出て大成功でした。
電気屋さん以外すべての職種を経験したのちに、最終的に塗装を本業に選んだのはこんな理由からです──。
大工さんの仕事は、1日にやれる仕事の量に、どうしても物理的な限界があるんですね。しかし塗装は、1日で500平米でも1000平米でも、頑張れば頑張るほど量が吹けた。……ということは、頑張りしだいで毎日の手取りが大きくなる。
女房とは会社員時代に結婚しています。会社員の妻になるつもりで結婚したら、ある日夫が「俺は職人になる！」と言い出して、自分も現場に引っ張り出されて……。女房も大変だったと思います。屋根の上に這いつくばって付いてきていました。薩摩男児のわたしが、有無を言わさずやっていくので、それしかなかったのでしょう。
妻が現場に出ていたのは３年くらいでしょうか。子供が幼稚園になると行事が増えてくる。そこでカミさんは現場卒業です。そういう経緯で、それ以降は若い丁稚さんを２人～４人とか、最終的には職人さんを8人くらいを抱えて、〈西谷工業〉を屋号に立てた個人の親方として働きました。
元請け会社として〈西谷工業〉が独立したのは、10年くらい経ってからです。理由は── 鹿児島って仕事が少ないんですね。どうしても職人さんに、休んでもらう日がでてしまう。しかも単価が安い。職人さん達の生活を考えると、わたし自身が社長業として経営に専念したほうがが良いだろうと、そういう判断です。
元請け会社の経営者になるときに、わたしは覚悟を決めました。「これからは、やらされる仕事ではないんだ。納得のいかない仕事は大手の下でもやらないぞ！」
例外は、「この監督さんはうちの仕事をわかってくれる。この人となら仕事がしたい」と思える現場だけ。そうして、そういう監督さん達もしだいに定年退職でいなくなり、いまでは元請けの仕事ばかりになりました。
Chapter 3
ひげをはやしたのは、23〜24歳の頃です。その頃のわたしは童顔で、これを言うと皆さん笑いますが、ジャニーズの少年隊か……というくらい可愛らしい顔つきで、そこがお客さんからは、頼りなく見えたらしい。
「若くても良い仕事ができるのだから、ひげでもはやして貫禄をつけたほうがいいよ」と勧められて、なるほど、とすぐに取り入れました。以来40年間ひげをトレードマークでやっています。
ラジオ番組『親方ひげちゃんのお住まい教室』を始めてから7年になります。〈きちんとした会社〉〈良い塗装とはどういうものか〉を、会社の宣伝を超えて多くの人に知ってもらいたいと思ったのがきっかけです。ラジオはたのしいですね。このあいだ公開セミナーを開催したらたくさんの人が来てくれました。生まれて初めてサインしました！
掲載日：2022年7月14日
鹿児島MBCのラジオ番組の“親方ひげちゃん”は、地元では知らない人がいない有名職人だ。