Koami Meiko (age38)
1984年5月8日 横須賀生まれ。高校2年生16歳のときに学校を辞めて、翌日には現場に立っていた。眼下に海を見下ろす閑静な住宅地に、犬と猫と暮らしている。趣味は手芸、編み物、一人キャンプ、DIY、料理。職人歴22年。今回の現場は、小網さんが購入した自宅である。株式会社イシカワ。
INTERVIEW
1984年5月8日 横須賀生まれ。高校2年生16歳のときに学校を辞めて、翌日には現場に立っていた。眼下に海を見下ろす閑静な住宅地に、犬と猫と暮らしている。趣味は手芸、編み物、一人キャンプ、DIY、料理。職人歴22年。今回の現場は、小網さんが購入した自宅である。株式会社イシカワ。
Chapter 1
この現場は、わたしの家です。静かな暮らしが好きなので、10年前にこの家を中古で購入しました。職人になって12年目のことです。
磯子は神奈川県の海の町ですが、このあたりは、海を見下ろす山の斜面にあたり、車があまり通らなくて静かなんです。
犬と猫と一緒の、一人暮らしです。自分の家を塗装するのは初めてですが、ふしぎなことに、仕事の時のようなこだわりが、自分の家にはあまりわいてこないんです。なんというか… 気楽でした。
今回は断熱材の入った新しい塗料を使って、暮らしの体感などお客さんへ言葉で伝えられるように、という実験台の役目もあります。
色は自分で決めました。アイボリーホワイト。自分の家を塗ったことで、お客さんの気持ちがよくわかりましたね。何百色もある中から色を選ぶって、ほんとうに大変です。ペンキ屋さんとしてアドバイスはするけれども、決めるのはお客さん自身ですものね。
選んだ色を塗ってみたら「なんかちがう」となって、現場で調色して塗ったところもあります。見本で色を決めても、現場で実際に大きく塗るとイメージとちがってくるとか。お客さんの感覚で現場を俯瞰(ふかん)できたことは、仕事にも活かせると思います。
会社の仲間たちと、入れ替わりの少人数で塗りました。玄関扉はこれからですね。時間を見つけて自分で塗ります。何色に塗ろうかなと、楽しみに考えています。
Chapter 2
現場で働き始めたのは16歳のときです。2年生になったばかりのときに、高校を辞めて、翌日には現場へ飛び込んでいました。とにかく仕事がしたかった。 高校へは友達に会いに通っているだけで、毎日、働きたいなあと思っていたんですよね。
高校へ通いながら仕事を探していて、先生へ「辞めます」と伝えたその日に、ペンキ屋さんの面接に行って。「じゃあ来ていいよ!」ということで、次の日から現場です。
〈働く〉という選択肢の中で塗装を選んだ理由ですかーー。外で身体を動かして働きたい。そう考えていると、建築系しか選択がなかったんですよね。親が外構の仕事なので、身近に感じていたことも大きいと思います。
「鳶(とび)がいいかなあ。土木にしようかなあ」と考えているときに、ペンキ屋さんの求人を見て、条件が合っていたので、すぐに電話をしました。だから最初は、「ペンキ屋さんになりたい!」ではなくて「建築系のなにかがしたい」という気持ちです。
高校を辞めたばかりの16歳の女の子が、突然現場にやって来たわけですから、先輩職人たちは皆びっくりしていました。
当時はいまよりも、女性が現場で受け入れられにくかった時代でもあります。強い言葉で否定されるのは当たり前で、厳しかったです。だから逆に意地になって働いたのかな。でも、最初から楽しかったです。他の仕事を知らなかったから「仕事ってそういうものだろう」と、普通に受け入れていた部分もあると思います。いまはもう、パワハラとかって問題なりますよね(笑)。
自分より年下の人が入ってきたのは、10年くらい経ってからかな。若い子たちにはとにかく優しく、最初から刷毛を持たせてあげたり気を使いますよね。辞めちゃいますから。
Chapter 3
犬と猫と一緒にこの家で暮らしています。趣味は模型を作ったり、手芸や編み物ですね。ペンキもそうですけれども、手元の作業が好きなんです。毛糸で友達の子供の服を編んだりもします。ほかには、一人キャンプとDIY。棚を作ったり家具を塗ったりもします。
このベンチは、父が作ってプレゼントしてくれたものです。やっぱり職人の造るDIYって、それが専門じゃなくても、ちゃんとできていますよね。今回は、家の仕上げが終わった後に、これをわたしが塗ろうと思います。
じつは、お料理が大好きなんです。1日の仕事を終えて家に戻って、疲れているはずなんだけれども、お料理をしている時間が一番好きです。
毎日、カツオ節を削ってお味噌汁を作って、ご飯を炊いて。わたし、味噌汁とおにぎりが大好きなんですね。明日の朝ごはんと昼のお弁当の段取りをして…。その時間がとっても楽しいんです。味噌も自分で作っているんです。毎年冬に大豆で仕込みます。
一人キャンプへは、犬と一緒に出かけます。千葉とか山梨とか富士山のほうとか、いろいろなところへ一人で行きます。静かに過ごす夜が好きなんです。わたしは、一人の時間がないとだめなんですよね。
掲載日:2022年11月17日
高校を辞めて飛び込んだ初めての現場。塗装にこだわっていたわけではないんです。