Nishizawa Manato (age17)
西澤塗装勤務 2002年6月3日、茨城県生まれ。中学卒業後、父が経営する西澤塗装に入り、塗装職人への道を歩き始める。将来の夢は父とともに、西澤塗装を大きく育てていくこと。趣味はテニス、「遊☆戯☆王」などのカードゲーム
INTERVIEW
西澤塗装勤務 2002年6月3日、茨城県生まれ。中学卒業後、父が経営する西澤塗装に入り、塗装職人への道を歩き始める。将来の夢は父とともに、西澤塗装を大きく育てていくこと。趣味はテニス、「遊☆戯☆王」などのカードゲーム
Chapter 1
中学1年生のとき、大きな交通事故に遭ったんです。自転車に乗っていて、大通りに出たとき、出会い頭でクルマとぶつかってしまった。自分では覚えていないんですが、心肺停止になるほど、シリアスな状況だったそうです。
それに、脳に大きなダメージを受けてしまっていたので、命が助かっても、歩けないだろうと親たちは言われていたらしいんです。だけど、リハビリは必要でしたが、いまは不自由なく、歩くことができます。幸運なことに、身体を普通に動かすことができます。
子供の頃から空手をやっていたり、スポーツは得意だったんです。ですから、普通に身体が動かせることは、本当によかったと思っています。もし、あの事故で運動ができなくなってしまっていたら、いまの仕事もできなかったでしょうし、精神的にたいへんだったと思います。
Chapter 2
きょうだいは20 歳の姉と8歳の妹。男は一人ですので、小さい頃から親父の跡を継ぐことを考えていました。そして、事故に遭ったこともあって、少しでもはやく、この仕事の技術を身につけようと考えるようになりました。ですから、中学卒業のとき、高校進学という選択肢は自分のなかになかったんです。
「絶対、高校へ行ったほうがいい」と母や祖母には言われました。同級生の多くは高校へ進学するので、心が揺らぐがないこともなかった。しかし、父はこう言ってくれた——「高校の3年間はムダではないだろうけれど、この仕事をずっとやっていくつもりなら、3年間、キャリアを積んだほうが、将来、生きてくる」。その言葉に肩を押されて、昨年4 月、父のもとに弟子入りしました。
この仕事を始めてみて驚いたことは……父、というか、親方が家と違って、思っていたよりも全然、厳しかったことです。家ではあまり怒られたことはありませんでしたが、弟子入りをして、現場に入ったとたん、ものすごく口やかましくなった(笑)。ちょっと反発する気持ちにもなりましたが、自分は何もできないので、素直な気持ちになろうと思いました。
最初のうちは施主さんへの朝の挨拶もきちんとできなかったので、毎日のように怒鳴られてました。いまは二、三日置きくらいかと思いますが、自分が至らないことはわかっています。日々、ガミガミ言われてたときは、仕事もちょっとイヤになっていたんですけれどね(笑)。ただ、ボクを一から教え込もうという親方の気持ちはひしひしと伝わってきてい
た。それに、現場と家でメリハリをつけてくれているので、自分としても仕事と家で気持ちの整理がついて、仕事に向き合うことができています。本当に、ありがたいと思っています。
Chapter 3
親方がいろいろ言ってくれるおかげで、一つひとつの現場が見えてくるところがあります。この現場の施主さんはこういうことを望んでいるんだなあということが、わかってくる。
全部ではないんですけれど、勉強になりますし、仕事をいただいていることへの感謝の気持ちが湧いてきます。
いちばんやり甲斐を感じていることは……外壁塗装では、三度塗りが多いんですが、次のステップで発色をよくするために塗りを繰り返していきます。一度目よりも二度目のほうがきれいに発色していって、そして、三度目で完成していきます。
そのステップ、ステップが見えることが、すごく楽しい。
ステップごとに、こんなに違う色に変わっていくんだ、と——そして、三度塗りなら三度目で、きれいに完成させるには、どういう作業、どういう技が必要になるのか? いちいち父は教えてくれないけれど、仕事ぶりを見ていて、自分で考えると、わかってくるような気がするんです。そこに、この仕事のやり甲斐みたいなものを感じているところです。そして、職人として、どう歩んでいくのかが見えてきた気もするんですよ。
Chapter 4
この仕事を始めて2年目ですが、正直、塗装の技術はまだまだだと思っています。父が経験1年で独立したそうなんですが、いまの自分と比べてみると、信じられません。ただ、自分は自分ですから、焦る気持ちはないんですけれどね。
何ごとも経験と、いろいろな作業にチャレンジさせてもらっています。失敗が許されない吹き付けはまだやらせてもらえないんですが、新しい作業に次々と挑んでいけるのは本当に楽しい。親方の仕事ぶりを見て、反省材料や目標にできるので、いい環境で仕事ができているという充足感もあります。
将来的には、親父の跡を継いで、西澤塗装を大きくしていきたい。というか、とりあえず、はやく親方を支えていけるような職人になりたいですね。親方、というか、親父は17歳で子供ができたそうですが……自分には彼女がいませんが、いまはめいっぱい仕事に打ち込もうと思っています。少しでもはやく、一人前の職人になりたいですからね。ただ、18歳になって、クルマの免許を取ったら……彼女ができたらいいなと思っています(笑)。
掲載日:2019/08/30
一人息子なので、子供の頃から跡を継ごうと心に決めていました