Harada Kyoko (age50)
原田京子 1970年8月1日生まれ。職人歴22年。不動産会社のOLから海外への“自分探しの旅”、アパレル販売員を経て、28歳の時本格的に塗装職人の世界へ入る。親方についたことはなし。持ち前の独立心と探求心で自らを築き上げた女性職人。ホームページのブログで垣間見せる、子供や家族への視線にやさしさがにじむ。職業訓練指導員免許、1級塗装技能士など資格多数。株式会社リペイント湘南。リペイント湘南|藤沢市の屋根・外壁塗装、塗り替え、防水の専門店
INTERVIEW
原田京子 1970年8月1日生まれ。職人歴22年。不動産会社のOLから海外への“自分探しの旅”、アパレル販売員を経て、28歳の時本格的に塗装職人の世界へ入る。親方についたことはなし。持ち前の独立心と探求心で自らを築き上げた女性職人。ホームページのブログで垣間見せる、子供や家族への視線にやさしさがにじむ。職業訓練指導員免許、1級塗装技能士など資格多数。株式会社リペイント湘南。リペイント湘南|藤沢市の屋根・外壁塗装、塗り替え、防水の専門店
Chapter 1
前職は不動産会社のOLです。いわゆる普通のOLですね。上司にも同僚にもめぐまれ、環境の良い会社だったのですが、でも、いっぽうでその頃の私は、デスクワークに退屈を感じてしまい、つねに「私の人生、このままでいいのかな…」と悩んでいました。23歳の頃です。
そのとき“ワーキングホリデー”という海外留学の仕組みを知るのですね。働きながらオーストラリアで1年間暮らすという独特のビザです。
私は即座に「これだ!」と、OLをやめる決意をしました。ダイビングが好きなんですね。オーストラリアには、グレートバリアリーフという憧れのダイビングスポットもあります。英語ができるわけではなかったけど、とにかく行くと決めました。もちろん両親は大反対。会社の上司や同僚も心配してくれまし
たが、気持ちは揺らぎません。
その頃はインターネットも携帯電話もないでしょう。オーストラリア大使館へ自分で行って、関係資料を閲覧して、情報をノートに控えて。それから辞書を引きながら英語で手紙を書いて、国際郵便で「学校へ入りたいのですけれど」と送って、願書を送ってもらって、また返送して…という。行く以前の手続きだけで、もう大変でした。
1年間のオーストラリアの生活は、刺激的な経験をして、良い仲間と出会えて、本当に充実しました。でも残念なことに――自分自身の人生や将来を導くような発見には繋がらなかったんですよね。いわゆる“自分探し”で挑んだはずのワーキングホリデーだったのに、自分を探せなくて、帰ってきた私はしばらくの間、ぼーっとした燃えつき症候群のようになってしまいました。
Chapter 2
これじゃいかん!と求人で職を探して、アパレルの販売員になりました。26歳の時です。ちょうどその頃に、兄が独立して「リペイント湘南」を始めたので手伝い始めたのがこの仕事に入ったきっかけです。
家の仕事を手伝ってほしいと言われて、なんとなく家業の「リペイント湘南」に入りました。
入ったといっても最初はアルバイトです。デスクワークが向いていないのはわかっていたので、最初から現場のお手伝いです。
ふり返ってみると、子供時代から、何かを自分の手で作るのが大好きなんですよね。高校を卒業した時に、誕生日のプレゼントを聞かれて「電ノコ(電動のこぎり)が欲しい!」と答えていたくらいだから、たぶん向いていたのでしょうね。
20歳くらいの時には、木材を切ってベッドを作ったり。事務机を塗ったり。海岸に流れ着いた流木を材料に、キャンドルスタンドのような雑貨を作るのも楽しかった。
そして、28歳の時、父と兄に口説かれて、この業界に本格的に入りました。以来22年、現場で塗装をしていることになります。
職人としての私が変わっているのは、OLから入って、親方についたことが一度もないことだと思います。いろんなことを誰かに教えてもらいながら、わからないことは塗料に関してもカタログを見て、調べて、今でもいろんな人に教えてもらいながらやってます。キャリアが長くなっても、そういう姿勢を持ってやっていきたいですね。現場で男女を意識することはあまりありません。
Chapter 3
最初の頃はたいへんなこともありましたよ。当時の職人は皆さんが昔ながらの人達で、OLから職人の世界へ突然踏み込んだ私の言っていることがなかなか伝わらない。お願い事をしても聞いてもらえない。どうしてなんだろう、なんでやってもらえないんだろうと、苦悩した時期もありました。
でも、なんで伝わらないのだろう、とヤキモキと悩んでもしょうがないとある日気づくのですね。伝わらないことに悩むよりも、伝わる部分を大切にして、そこに「ありがとう」と言えたらいいじゃないか、と。それからは、いろんなタイプの職人さんとコミュニケーションが取れるようになり、気持ちも楽になっていきました。
当時の職人さんたちは凄かったですよ。荒々しい人も多かったですからね。信頼ができたらできたで、夜中に突然電話がかかってきて、「京子さん! 今すぐ来てくれ」と。聞くと、「職人同士が包丁を持ってけんかしてるから止めてくれ!」と。えええ! その場面で私を呼ぶか!!と焦りましたが、パジャマで外へ駆け出しました。
今年で私の職人歴は22年になります。昔も今も、やっぱり現場は楽しいです。きれいに塗りあがった仕上がりを眺めるのは本当に気持ちがいい。塗装ならではの仕事の楽しさ、気持ちの良さを若い職人さん達にも感じて欲しいなと思います。
掲載日:2021/2/26
前職はOL。オーストラリアの自分探しの旅を経て、今は歴22年のベテラン塗装職人です。