Morita Fukujiro (age68)
昭和28 年4 月1 日生まれ。長崎県佐世保市生まれ。18 歳で左官職人で現場デビュー。以後、電気、メンテナンスなど住宅全般を扱ったが、40 歳を過ぎて体力の衰えを感じて、「技術とセンスで長くできる仕事を」と塗装専門へ転身。数年前に大き病を患うが現場復帰を果たした。職人歴50 年/ うち塗装歴20 数年。所属/ 株式会社東明(長崎県佐世保市0120-8216-17)
INTERVIEW
昭和28 年4 月1 日生まれ。長崎県佐世保市生まれ。18 歳で左官職人で現場デビュー。以後、電気、メンテナンスなど住宅全般を扱ったが、40 歳を過ぎて体力の衰えを感じて、「技術とセンスで長くできる仕事を」と塗装専門へ転身。数年前に大き病を患うが現場復帰を果たした。職人歴50 年/ うち塗装歴20 数年。所属/ 株式会社東明(長崎県佐世保市0120-8216-17)
Chapter 1
戦後間もない頃に長崎県の佐世保で生まれ、佐世保の小学校を卒業して、今も佐世保に暮らしているよ。
18 歳で左官になったんだよ。土や砂、いろいろな材料を、鏝(コテ)をつかって壁や床に塗ってね。30 歳過ぎまでは左官をやっていたの。それから住宅の現場へ入りました。見積もりを取って受注して、電球やメンテナンスなど全般をやったね。
塗装専門で現場で働き始めたのは、40代の半ばからかな。だから今68 歳だけれども、“塗装専門のベテラン” というわけではないんですよ。塗装一本に絞った理由は、体力の衰えを感じたから。重いものがきつくなってきた。力仕事は一生はできないよ。
かといって、スポーツ選手のように“引退” というわけにはいかないでしょう。長く現場で働きたいけんね ──そう思って塗装を選んだよ。
左官の仕事と塗装は似ている部分があるよ。泥とペンキじゃ塗る物は真逆だけれど、どちらも仕上げの仕事。仕事の前と後で「きれいになったな!」と感じるのは、それは楽しいですよ。
68 歳は、会社員なら定年退職だろうけれど、現場では体が動けば働ける。それが良さだよ。ありがたいことだ。
じつは数年前に脳卒中をやってね。入院して大変だったけど、また復帰して働いています。刷毛やローラーを手に、晴れた日に現場に立つのは気持ちが良いね。
Chapter 2
塗装は20 年ちょいだけれど、年齢的にはベテランだから、周りで働いている人達は、全員が年下になりますね。
先輩風なんか吹かさないよ。会社には歳は下でも、私よりも長く塗装やっている人もいるからね。たまに若い人に仕事のやり方を聞かれることがあるけれど、押し付けないようにしている。皆それぞれ、自分のやり方があるからね。
もう歳だから屋根とか危険な場所は若い人にやってもらってます。張り合うことじゃないから。こうして元気で働いていることを、家内は喜んでいるよね。
子供はいません。家内とは、いつ結婚したかはよく覚えてないけどもう随分になるね。専業主婦です。仲は良いよ。
ずいぶん一緒に旅行をしましたね。噴火で有名な雲仙、福岡とか別府とか。九州にはいろんな場所があるからね。旅行は楽しいよ。
家で仕事の話しをすることはないな。自分の家を塗ったりもしない。
趣味はね、ずっと釣りをやってきました。九州あちこちいろんなところへ行きましたよ。福岡や大分にも行ったし、四国へも行った。黒鯛とか石鯛とか、磯にも行ったし、なんでも釣ってきましたよ。こちらは魚が豊富ですから。竿やリールをたくさん持っていたけれど、今もう手元にあるのは5 ~ 6 本かな。
その釣りもね、最近はもうあんまり行ってない。老眼ですからね。糸がね(笑)見えなくて結べなくなっちゃった。
Chapter 3
長崎は気候が暖かいんですよ。もう、夏は滅茶苦茶暑いですよ。特に、今のご時世の温度は昔とちがう!
長く生きてるからわかるんだけど、現場にも地球温暖化の影響が出てるね。そりゃ昔も夏は暑かったですよ。でも自分達が子供の頃は、「わ~! 今日は30℃を超えている。どうりで暑いはずだ」と騒いでいたんですよ。でも今なんか、30℃なんて当たり前でしょう。35~6℃の日が平気である。それどころか逆に、「今日は30℃だから楽だなあ」と、昔苦しんだ暑さが過ごしやすい日になっている。
じゃあ冬の現場はというと…。やっぱり佐世保でも冬は寒いんですよ。寒くなると乾きが遅くなったりね。冬になると少年時代はマラソンをやったなあ。息が白くなってね。夏は水泳。佐世保は海がきれいでしょう。夏休みなんかは、一日に2回も海に行って、兄と一緒に泳いでいました。ちょっと行けば海ですからね。兄は今も元気ですけれど、仕事は引退しています。
長く現場で現役で働きつづける秘訣(ひけつ)を若い人にアドバイスするとしたら ──「 楽しく生きる」ということです。
ただまじめに一途に一心不乱に現場に打ち込んで、いつも思い詰めたような仕事をしている…というタイプでは、わたしなんか全然ありません。生き方に楽しみを見つけて、仕事とメリハリをつけて朗らかに生きる。
今の若い人は大変だと思います。厳しい時代でしょう。世の中が真面目(まじめ)過ぎる。私らの頃は、真面目過ぎる石頭のことを“バカ真面目”と笑っていたんだけど、今は社会がバカ真面目
(笑)。
どうやって肩の力を抜いて生きるかは、なかなか難しいよね。その人本人によるけんが、皆ちがうからね。たくさん日にちを働いて稼ぎたいと思う人もいるし、旅行をしたいという人もいる。正解はないよ。お互いに仲良くやっていくのが良いね。
掲載日:2021年12月24日
長く現場で働くコツは、思いつめ過ぎないこと。気持ちを切り替えて毎日を楽しく働く。